海と共に素直に育む。今届けたい、若狭のブランド魚「敦賀真鯛」

敦賀真鯛は2018年9月に福井県敦賀市でブランド化された養殖鯛。弾力のあるプリプリとした食感、臭みがないフレッシュな味わいが評判を呼び、地元福井でも人気の魚として知られています。全国ではまだまだ認知度が高くありませんが、若狭で注目の逸品のひとつです。敦賀真鯛の養殖に情熱を燃やす地元漁師「中村旅館」の中村さんにインタビューしてきました。

地の利を活かした恵まれた養殖漁場、敦賀湾

敦賀湾は、日本最北端の鯛養殖漁場です。リアス式海岸の入り組んだ地形が日本海の荒波を軽減するため比較的波は穏やかで安定した養殖が可能です。また山から栄養を多く含む雪解け水が流れ込み、プランクトンが豊富になります。この養殖漁場として恵まれた環境を活かし約50年前から敦賀真鯛の養殖が行われてきました。

成長スピードの「遅さ」こそが強み

冬は厳しい寒さに見舞われる敦賀湾。冬場の養殖場の水温はわずか10度ほどにしかなりません。このくらい水温が低くなると、真鯛の餌への食いつきが悪くなり、なかなか大きくなりません。流通サイズ(1.5kgぐらい)になるまで一般的には2年ほどかかりますが、敦賀真鯛は3年近い年月を要するものもあるそうです。

時間もコストもかかる。このことは、産地として一見マイナスなように思えますが、実はこの成長速度の「遅さ」こそが唯一無二の強みなのです。ゆっくり時間をかけて成長することで身が引き締まり、弾力のある食感になるとともに、脂が年輪のように身全体に広がります。

安心品質は、丁寧な「ケア」から

養殖では細菌や害虫による魚病などのリスクにいかに対応するかも大切になります。敦賀真鯛の漁場では、薬品に頼ることなくその被害を抑えられています。理由は、保養尾数の管理や餌の品質といった丁寧な「ケア」により、細菌や害虫によるリスクのない環境を実現しているから。だから、自然に優しく、人体にも安全な養殖が実現できているそうです。50年の経験と技を活かし、手間ひまかけて丁寧に育て上げた敦賀真鯛の味は他とは比較できない格別の味なのです。

次の世代に繋ぐ。自然海に逆らわない、敦賀湾の豊かさを活かした自然な養殖を

敦賀真鯛を養殖する生け簀は、縦、横、深さが6×6×6mと広さと水深を十分に確保し、一つの生け簀で育てる成魚は1,000匹以内と決められています。これは真鯛同士がぶつかってヒレや鱗に傷がつかないようにするため。生け簀を覗くと自由に泳ぎ回る敦賀真鯛の姿を見ることができました。

「一箇所に集中して養殖を行えば、海とのバランスが崩れてしまう。海を自然な状態に保ち、この恵みを活かしてずっと養殖を行ってきました。これからも海の力に合わせた方法で美味しい敦賀真鯛を皆さんに届けたいんです」

魚粉や蟹殻を含む餌を投げ込むと活きのよい鯛が元気よく集まってくる

現在は後継となる息子の翔也さんも共に敦賀真鯛の養殖に取り組んでいる

かつての鯛養殖はコストを下げるため生け簀をいっぱいにして鯛を育てることが主流でした。今もその方法を続ける産地も少なくありません。病気の鯛が見つかれば薬を使って感染を防ぎ、成魚になるまでなんとか育て上げる。出荷される鯛は鱗が剥がれ傷が多い。味や品質も天然物には絶対勝てないと言われてきました。この方法では鯛養殖の未来がないと養殖方法を工夫する漁師も大勢いますが、低品質な養鯛が今もなお、多く市場に出回っているのも事実。

海と共に生きてきた漁師の目利きと50年の努力が生み出した敦賀真鯛は味も品質も高く、これまでの養鯛のイメージをガラリと覆します。四季折々の海の幸に恵まれる若狭湾においても自信を持って届けたい逸品です。

生産者おすすめのしゃぶしゃぶを八百熊川で味わう

八百熊川では敦賀真鯛を特徴を感じてほしいとの思いから敦賀真鯛をまるごと1匹味わう「敦賀真鯛のしゃぶしゃぶ」を春の季節限定でお届けします。刺身で味わうのももちろん絶品!ですが中村さんのおすすめの味わい方はしゃぶしゃぶ。切り身を敦賀真鯛でとった出汁に潜らせる、贅沢。ややレアで食べると真鯛の弾力ある食感と口の中で広がる脂の旨みを存分に楽しむことができます。季節野菜を添えて、小浜市の老舗「とばや屋酢」の塩ポン酢と一緒にさっぱりとお召し上がりください。

敦賀真鯛を1匹丸ごと余すことなく味わい尽くして

真鯛のしゃぶしゃぶの他に、ご飯やお酒のお供にぴったり甘辛味の「鯛の兜煮」、鯛出汁の旨味を染み入るまで味わう「〆の鯛雑炊」もお楽しみいただけます。ぜひ敦賀真鯛を存分に楽しんでいただけると嬉しいです。

八百熊川
writer
yao-kumagawa

八百熊川は、京都と若狭をつなぐ鯖街道の宿場町<熊川宿>にある古民家宿です。歴史的な街並みが残る熊川宿で、里山で食材を採り、井戸とカマドでご飯をつくり、トレイルを楽しむ。そんな熊川宿ならではの時間をお楽しみください。

八百熊川は、京都と若狭をつなぐ鯖街道の宿場町<熊川宿>にある古民家宿です。歴史的な街並みが残る熊川宿で、里山で食材を採り、井戸とカマドでご飯をつくり、トレイルを楽しむ。そんな熊川宿ならではの時間をお楽しみください。